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あなたは、刑法第39条をご存知でしょうか?

刑法第39条は、心神喪失及び心身耗弱についての責任能力を定めた法律であり、その内容は以下の通り。

「条文」

  1. 心神喪失者の行為は、罰しない。
  2. 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

つまり、「心神喪失者」というのは、精神障害者。

犯行当時、理性的な判断が非常に困難であったと認められた場合、責任能力の無い「心神喪失者」と認定され「無罪」となります。

また、「心神耗弱者」の場合は、心神喪失よりは症状は軽いものの、理性的な判断が制限されていたと認められ、限定責任能力の「心神耗弱者」として減刑されます。

え?被害者は納得いかなくね?

「被害者や遺族にとっては、誰に殺されようと,殺されたことに変わりはない」わけで、精神障害者の犯罪がなかったことにされ、自然災害であるかのように扱われるのは全く納得がいきません。

被害者やその遺族のやるせない心情に共感し,相応の処罰を要求する,という被害者の側に立った見方も存在していて、重大な事件が起こるたびに刑法第39条について議論されています。

「39」というタイトルのこの映画は、刑法第39条という重いテーマに問題提起した作品です。

39 〜刑法第39条〜

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  • 制作:1999年
  • 監督:森田芳光(故)失楽園や黒い家などのシリアスなミステリー映画から、恋愛映画、喜劇まで手がける日本屈指の映画監督。
  • 出演;鈴木京香、堤真一、樹木希林、岸辺一徳、吉田日出子、山本未來、勝村政信、江守徹
  • 上映時間:133分

あらすじ

猟奇的な夫婦殺害事件が発生し、劇団員の柴田真樹(堤真一)が逮捕される。彼は殺害こそ認めるものの、殺意は否定。殺害当時の記憶はなかったと主張する。そして裁判中、人格が豹変したことから、司法精神鑑定が請求される。

みどころ(ネタバレあり)

まだ作品を見ていない人は、見終わった後に読むことをオススメします。

まず、脚本がすばらしい。

脚本を簡単に説明すると、

幼くして自分の妹が殺されたにも関わらず、自分と同い年くらいの犯人が刑法第39条により刑を免れ、ふつうに生きていることに対する恨みから、自分の戸籍を変え、恋人まで譲り、他人に成りすまして多重人格者を装って妹を殺した犯人を殺し、自分も刑法39条の恩恵を受けて無罪を勝ち取ろうとする男の復讐劇です。

あ、全部言っちゃった。

重くのしかかるような雰囲気と、コントラストも暗く、緊張感を高める演出がとても斬新なアプローチ。

台詞や話し方も全員独特で、声を張ってハキハキと話す登場人物は誰もいないところがまたリアル。

全員ぼそぼそ喋るので聞き取りにくい難点あり・・・

特にあんただよ、岸部一徳!!

聞き取れないから何度も巻き戻しました。

20年くらい前の映画なので、現代の高画質に慣れた僕たちにとっては、画質の荒さや演出の古臭さが気になるかもしれません。

しかし、このテーマと脚本があれば、そんなこと全く気にならないくらい内容が濃いのです。

そしてなんと言っても、主演の堤真一の演技がまぁすばらしい!!

最初の精神疾患を患って白目を剥く演技には、ちょっとやりすぎの胡散臭さを感じましたが、あれが精神疾患を装った「演技」の『演技』なら計算しつくされています。

樹木希林の国選弁護士役も、吉田日出子の認知症役もばっちりハマってました。

鈴木京香は言わずもがな。

疑問に感じた3点

映画の素晴らしさは揺るがないのですが、個人的に解せない箇所がありました。

①そもそも、ここまで複雑な復讐劇を行う必要があったのか?

だって妹が殺された時、主人公はまだ中学生でしたよ?自分が未成年のうちに殺せば、少年法に守られて復讐を果たせたのでは?あくまで刑法39条の適応にこだわったのでしょうか?

②娘が殺され、取り残された母親と息子の家に、犯人は不起訴処分で無罪になったことを伝えに来た軽薄な刑事の台詞。

「まあ、こういう事件は加害者の家族も被害者の家族もどっちも被害者みたいなもんなんで・・・」

はぁ??こんなこと遺族に言う刑事いんのか?

少しリアリティーに欠ける台詞です。というかもしこれがリアルなら救いようがありません。

 ③主人公が被害者の男を殺しに部屋に押し入った時、すでに被害者の妻が死んでいた件。

え、なんで死んでるの?

被害者の男が妻を殺した直後という奇跡的なタイミングで主人公は部屋に押し入ったという設定なのは後から分かりましたが、なぜそんな違和感の残る設定にしたのか?

原作との相違点

特に疑問点③については気になって仕方なかったので、原作について色々調べていると、やはり映画との相違点が見つかりました。

相違点はズバリ予想通り、

原作では、主人公がどっちも殺していました。

映画では、なぜ被害者の妻に主人公は手を下さなかったのか?

これは映画という視点で考えると、主人公により共感できるように書き変えられたのでしょう。それしか考えられませんが、個人的に惜しい点。

身重の妻もろとも殺してたとしても僕は共感するよ!

精神障害等による刑法犯 検挙人数

これは映画とは関係ありませんが、現在の日本では「心神喪失者」と診断され、罪を免れている犯罪者は1年に平均3人ほどいるそうです。

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上記の犯罪白書によると平成28年に殺人で検挙された人員総数は816人

その内、精神障害、または精神障害の疑いがある者は121人もいます。

その割合なんと約15%!!

放火犯にいたっては577人中、精神障害者は49人。

その割合は20%超えています!!

殺人や放火などの重罪においては、特に精神障害者の割合が高いことが統計から分かります。

最後に

いかがでしたか?

心神喪失、心神耗弱に関する事件は、あまりにも多く存在しています。

個人的には人の命を奪うような犯罪の場合、刑法39条を適応する必要があるのか?と疑問を感じます。

最後は映画の話から少し脱線しましたが、今でも論争を繰り広げている刑法第39条を扱った名作。

ぜひ一度ご覧になっていただきたい。

刑法第39条について、あなたはどう感じますか?

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