これまで数々のサイコパス映画を鑑賞した僕ですが、特に好きなサイコパス邦画タイトルは以下の2つ。
・『凶悪』
・『冷たい熱帯魚』
この2タイトルに新しく堂々と加わったのが、先日Amazonプライムで視聴した
『復讐するは我にあり』です。
かなり古い映画なので、視聴をためらっていましたが、とにかく強烈だったので紹介したいと思います。
『復讐するは我にあり』
制作:1979年・日本
監督:今村昌平
出演:緒形拳、三国連太郎、ミヤコ蝶々、倍賞美津子、小川眞由美
原作:佐木隆三「復讐するは我にあり」
5人を殺害した西口彰事件を題材にした長編小説。(直木賞受賞)
上映映画:140分
あらすじ
昭和38年。当時の日本の人々は、たった1人の男に恐怖していた。彼の名は榎津巌(えのきづいわお)。キリスト教カトリック信者であり詐欺師である彼は、九州、浜松、東京で5人を殺害し逃亡をはかる。
史上最大といわれる重要指名手配の捜査を、時には大学教授、弁護士と称して欺きながら、詐欺と女性関係に明け暮れる男の犯行の軌跡と人間像に迫る。
みどころ(ネタバレあり)
ストーリーの冒頭、榎津巌は警察に確保され、パトカーで留置場へ移送される最中、同乗していた刑事に年齢を尋ねます。
歳は55であると刑事が答えると、榎津巌はこう切り出すのです。
巌「あと3年で首ば絞められて、ぶら下げられるとして、40か。どうジタバタしたっちぃ、あんたと同じ歳までおいは生きられんちゅう寸法たい。55・・・おいより10年以上余計生きて、まだまだ余計生きられる。不公平ばい。」
いやいや、マジでなんて台詞だよ!すげーな榎津巌さん。
と衝撃を受けたものの、オープニングの古臭い演出が嫌でも気になり、見続けられるか不安に・・・。
ストーリー序盤
榎津巌は1人目の男を殺害し金を奪って逃げる途中、その場にあった柿をかじって立ち小便をはじめ、さらに被害者の返り血を浴びて赤く染まった自分の手を、自分の小便で洗うのです。
こいつ普通じゃないな。
そこからはもう、怒涛の展開。
ストーリーが進むに連れ、映画の独特な雰囲気に引き込まれ、一瞬たりとも目が離せなくなっているのです。
古臭いとか演出にリアリティーが欠けるなんて、そんなこともう1mmも気になりません。
この映画の感じは、生臭い韓国映画がかもしだす雰囲気によく似ていて、最近の日本映画にはない新鮮味を感じることができました。
とにかく主人公の榎津巌役である緒方拳の怪演ぶりに脱帽です。
ストーリーの中盤
殺人犯であると知りつつも、かくまってくれる女性「ハル」との出会い。しかしハルの身を案じたハルの母親は、榎津巌に出ていくようお願いします。
ハル母「わしぁあのババアを本当に殺したかったで殺しただ。だもんで、殺ったときは胸がスーッとしただ。あんたスーッとしとるかね今?」
巌「いや」
ハル母「あんた本当に殺したいやつ、殺してねーんかね。」
巌「そうかもしれん。」
ハル母「意気地なしだに、あんたー。」
殺したかったから殺したハルの母親が犯した殺人とは対象的に、榎津巌の犯行の動機は自分の欲望のため。
このシーンで榎津が本当に殺したいというのは父親であると想像することができる重要な場面。
サイコパスと言えば、一般的に想像しがちな快楽殺人者。
でも榎津巌は違います。
金の為、女の為、自分の欲望を満たすために人を殺すのです。彼の人殺しは目的ではなく手段であるということ。
そしてラスト
榎津が死刑になる前の父親との面会シーン。
巌「あんたはおいを許さんか知れんが、おいもあんたは許さん・・・どうせ殺すなら、あんたを殺しゃあ良かったと思うたい」
父「ぬしはわしば殺せんばい。親殺しのでくる男じゃなか」
巌「そいほどの男じゃなかったちゅうんか?」
父「怨みもなか人しか殺せん種類たい」
巌「ちくしょう、殺したか・・・あんたを!」
この最後の巌と父のこの会話において、榎津がいかにして、狂気の殺人鬼と化したか、その理由を物語っているのではないでしょうか?
己の信仰を簡単に捨てて、国家権力の言いなりになった弱い父を、巌はずっと納得ができず、いつしか恨むようになっていたのでしょうか?
疑問点
榎津巌はどうしてハルを殺害したか?その理由についても本人も「分からない」と答えています。
本人が分からないんじゃあ分からないですね。マジで何回思い返しても殺す動機が分からない・・・それがサイコパスなのか?
また、この格好いい映画のタイトル「復讐するは我にあり」の意味についても色々考察しても分からなかったので、調べました。
「復讐するは我にあり」とは新約聖書「ローマの信徒への手紙」の一部を引用したものでした。
これは、自分で復讐せず、神の怒りに任せなさいという教え。つまり「復讐はわたし(神)のすること、わたし(神)が報復する」という意味なのです。
んー分かったけどタイトルの意味は分からないような・・・
あと、ハルを殺す場面で、ハルはキムチを漬けているようでした。
当時、韓国の文化がそこまで浸透していたとは思えないので、朝鮮人という設定だったのでしょうか?母親が人を殺したというのも、当時の時代背景を物語る揶揄?
考えすぎかな?
感想
とにかく期待していなかった分、インパクトが強烈に残りました。
若かれし頃の倍賞美津子も、若く綺麗で、とても魅力的な女性です。こんな名作に出演していたとは・・・
まあとにかく、エンターテイメントとしては満点に値する作品です。
古いと敬遠している人は、ぜひぜひ見てください。
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